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Interview
うつくしいひとをたずねて#1
写真家 鍵岡龍門

あなたの美しさをかたちづくるのは、きっと毎日の習慣。

すっぴんの笑顔。洗いざらしの髪。はたらく人の手。

年齢や性別に捉われない真の美しさは今日を積み重ねた、その人の歴史そのものです。
そんな内面から輝くひとを訪ね、日々の暮らしや仕事、モノ選びに対するこだわりや思いを聞く連載。

初回のうつくしいひとは、写真家の鍵岡龍門(かぎおかりゅうもん)さんとそのご家族です。

cado cuauraのシーン撮影を依頼し、ブランドのビジュアルづくりに大きく貢献していただきました。

撮影時の裏話や写真家として大切にされていることなどを伺いました。


生活の中にある美しい空気感を撮りたい

――鍵岡さんとの撮影を通して、ブランド設立に向けて、表現したいビジュアルイメージがより明確になった記憶があります。

鍵岡さん:2日間の撮影でしたよね。私が普段撮影している暮らしや生活の分野とは異なるジャンルの撮影だったので、当初は「僕で合うだろうか」と少し不安もありました。でも、2日目にいろいろな世代の方を撮った時に、流れを作れた感覚があって「これでいいんだ!」と手応えを感じたのを覚えています。
男性も女性も大人も子供も、みんなが流れるようにいて、ストーン!と抜けるような気持ちのいい空気感を撮れたというか。商品自体も事前に拝見して気に入っていたので、自分にとってのキレイの表現がうまくフィットできたならうれしいです。



――“自分にとってのキレイ”とはどういうものですか?

鍵岡さん:作り込んだカタチじゃなくて、日常の中におこりえるカタチや、自然と出てくるクセをおもしろいな、きれいだなと感じます。あとは光ですね。
cado cuauraの撮影で採用した逆光の光って、商品がわかりづらくなるので製品撮影で使うことは少ないんです。ただ、今回は広告的にドライヤーを明確に見せるよりも、商品を通して描きたい方向性を伝えるための写真を目指したくて。ブランディングに近い観点での撮影は私自身にとっても挑戦でした。

――女性に限定するような美容家電にはしたくなかったので、そこを鍵岡さんが汲み取ってくださったのはありがたかったです。

鍵岡さん:男性的か女性的ということよりも、もっと単純に、誰もが気軽に使えたらたらいいし、風がわーっと吹くのも楽しいし、そういう良さが伝わればいいなと。私の仕事は生活の中にある空気感のキレイなところを抜くことだと自認していて、今回僕に依頼が来た理由もそこなのかなと思っていました。
光でいうと、柔らかい影感や光の在り方の美しさは常に意識していましたね。特に家族のシーン写真に出ている柔らかな自然光は自分でも気に入っています。


苦笑や破顔の表情も自然と出る現場づくり


――鍵岡さんは人物を多く撮っていらっしゃるイメージがあるのですが、人物撮影で気を配ることはありますか?

鍵岡さん:撮影自体がスペシャルなことで気を張ると思うので、できるだけ普段の状態にしたいですね。苦笑の笑顔が出たり、「おいしい!」「えーっ!」と驚いたり、表情が崩れたりするくらいの柔軟な空気でありたいので、撮影時は僕もしゃべって流れを作るようにしています。固い空気をほぐして、空気さえ流れれば何かしら美しいものが撮れると思うんです。

――cado cuauraの撮影時も率先して和やかな空気を作ってくださいましたよね。

鍵岡さん:いい笑顔、いい表情であることが重要なので、取材の本筋は外さないようにはしつつも、表情が硬くなっているなと思うと全然違う話に振ってみたりはよくします。人の話を聞くのが好きなのでただ興味で聞いている部分もありますし、笑顔の写真の先で何の話をしているかまでは見えませんからね(笑)。


――そうした空気づくりというのはいつ頃から意識されていたんですか。

鍵岡さん:アシスタント時代、いいなと思う写真家さんたちに共通しているのは空気感を作ることだと気づいたんです。それぞれ写真の質感も違いますし、まったく異なる空気感で撮影していたんですけど、みんな、自分の美意識の中で、目指している美しさを撮るために現場の空気感を作ることを大事にしていたんです。
そこに気づいて以来、私もそんなふうに仕事をしたいという思いを持ち続けています。でも最初からそうだったわけではなくて、編集さんやクライアントから言われるがままに撮って、結果おもしろい仕事が来なくなった時期もありました。
先方のリクエストに応えること自体は楽しかったんですが、それよりも枠からはみ出して提案しながら撮影するほうが、その後にもおもしろい仕事が来やすくなるし、コミュニケーションも取りやすいんですよね。それに、撮影中にしゃべることは別に無理はしているわけではなく、家でもよくしゃべるって言われます。



奥様:仕事になると、さらにスイッチが入って、家にいる時の6人分くらいしゃべっているかもしれません(笑)。時々、スタッフの皆さんを困らせていないか伺うと、皆さん気遣っていらっしゃるのか「楽しいですよ」って言ってくださるんですが、本当かな?と……(笑)。

鍵岡さん:失礼だな!(笑)ただ、それを良しとしてくれる人と仕事ができると楽しいですし、結果いいものを作りやすくなりますよね。


奥様:「出し切ったー!」という感じで仕事から帰ってくることもよくあります。といっても、燃え尽きて灰のようになっているのではなくて、ゴールテープを切ってもまだ走ってるみたいな状態というか(笑)。


鍵岡さん:仕事でおもしろい人と出会えて、いい写真が撮れた時はすごく楽しくて!どの仕事も毎回楽しいんですが、特に楽しい時っていうのがあるんですよね。そんな時は家に帰ってきてもまだ燃えていますね。cado cuauraの撮影もすごい楽しかった撮影でした。


「4歳の息子も自分で髪を乾かしています」

――私たちもすごく楽しかったです。奥様と娘さんはcado cuauraのモデルとしても登場していただきましたが、実際に使われてみていかがでしたか?

奥様:撮影の時にドライヤーのスイッチを入れたらすごい強くてびっくりしました!風を可視化したら筒状で見えるんじゃないかってくらいまっすぐに吹く風ですよね。

鍵岡さん:撮影では髪がなびきすぎて「強」は使えなかったです(笑)。 でも、実際に使うとこの強さがいいんだよね。

奥様:我が家ではドライヤーを使うのは一日の一番最後なんです。疲れが蓄積した時間に動き回る子供たち3人の髪の毛を乾かすので、私も子供もなるべく早く終わらせたくて。
このドライヤーなら乾かす時間が今までより半分くらいの時間になったので、子供もイライラして動き回らないのですごく助かっています。

鍵岡さん:持ち手の握りが使いやすいんですよね。

奥様:使う時に重みが持ち手のくぼみに乗るのか、すごく楽です。

娘さん:弟はいつも自分で乾かしているよね。

鍵岡さん:そう!4歳の一番下の息子が自分で乾かすんです。たぶん持ちやすいんじゃないかなと思います。「自分でなんかやり始めた!」ってびっくりしたよね(笑)。



――ご家族で愛用してくださっているんですね。
今日はいろいろとうれしいお話を伺えてよかったです。
ありがとうございました。

< 取材を終えて >

鍵岡さんのハツラツとした「動」なテンポに対して、時折ゆるっとボケたり突っ込んだりされる奥様の「静」なテンポがとても楽しく、終始笑いの絶えなかったインタビュー。
3人のお子様の真ん中っ子ちゃんがまたなんともフォトジェニックで可愛く、撮影スタッフ一同、目がハートになってしまいました。初回とあって少々緊張していた私たちでしたが、鍵岡さんファミリーの柔らかな空気に包まれて、幸先のよいスタートを切ることができました。



– わたしの大切な道具 –

ニコンの中古レンズ

フィルムの頃から愛用しているレンズです。いろいろなレンズを試していますが、このレンズほど光をボン!と全部受け取るような取り込み方をするレンズはありませんし、ボケボケ加減も他では表現できません。私が撮る写真のイメージづくりのおおもとになるレンズです。ずいぶん汚れているので、本当はきれいにしたほうがいいんですが、中のチリがいい影響を与えているとも聞くので、このぼかし感がなくなるんじゃないかという恐怖感から掃除もできないんです(笑)。



<プロフィール>
鍵岡 龍門(かぎおかりゅうもん)

日本大学地理学科卒業後、ロンドン芸術大学への留学、スタジオでのアシスタント経験を経て帰国。2006年よりフリーフォトグラファーとして活動開始。2007年Canon写真新世紀佳作受賞。書籍、雑誌、WEB、広告など多様な媒体で活躍中。
http://kagiryu.jugem.jp/


撮影:片桐圭
取材:やまだとしこ
スタジオ協力:aptp ( https://aptp.jp/apartment/ )

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